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家族が亡くなった直後は、悲しみのなかで葬儀の手配に追われます。しかし現実は待ってくれません。死亡届は7日以内。年金の停止届は14日以内。相続放棄は3ヶ月以内。相続税は10ヶ月以内。手続きには次々と期限が迫ってきます。
相続で特に怖いのは、「知らなかった」では済まされない期限があることです。相続放棄の3ヶ月を過ぎれば、故人の借金も全て引き継ぐことになります。相続税の10ヶ月を過ぎれば、延滞税と加算税が上乗せされます。
令和6年の司法統計によれば、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件は年間15,379件。しかもその約76%は遺産額5,000万円以下の「ごく普通の家庭」です。相続トラブルは富裕層だけの問題ではありません。
この記事では、相続発生後の手続きを時系列順に整理し、「いつまでに」「どこに」「何を出せばいいのか」をまとめました。期限の厳しいものから順に解説しますので、今最も急ぐべき手続きがわかるようになっています。

直後にやること(7日〜14日以内)
7日以内
死亡届の提出 法定手続き・7日以内
届出先: 故人の本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場。病院で受け取る死亡診断書と一体の書類で、提出すると火葬許可証が交付されます(戸籍法 第86条・第87条)。

死亡診断書は提出すると手元に残りません。提出前に10枚以上コピーを取ってください。年金、保険金、銀行口座の解約など、あらゆる手続きで繰り返し必要になります。コピー代は数百円ですが、後から再発行するには数千円かかります。
14日以内
年金受給停止届の提出 法定手続き・14日以内
届出先: 年金事務所または市区町村役場。届出が遅れて過払いが発生すると、後から返還を求められます。国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内が期限です。未支給年金(亡くなった月までの分)の請求も同時に行えます(国民年金法 第105条、厚生年金保険法 第98条)。

年金の停止届と同時に「未支給年金」の請求を忘れずに。亡くなった月の分まで受け取れる権利があります。これは請求しないと支給されません。
世帯主変更届の提出 法定手続き・14日以内
届出先: 故人の住所地の市区町村役場。世帯に残る15歳以上の人が2人以上いる場合に届出が必要です。1人だけなら自動的に世帯主になるため届出は不要です(住民基本台帳法 第25条)。
健康保険の資格喪失届・保険証返却 法定手続き・14日以内
届出先: 国保は市区町村役場、社保は勤務先。同時に葬祭費(国保: 3〜7万円)または埋葬料(社保: 5万円)の申請も忘れずに行ってください。申請しなければ支給されないので、見落としやすいポイントです(国民健康保険法 第9条、健康保険法 第48条)。
早めに対応すること(1〜2ヶ月以内)
相続人の確定(戸籍謄本の収集)
相続手続き全体の土台になるのがこの作業です。故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を集めて、法定相続人を確定します。転籍や婚姻で本籍地が複数の自治体にまたがっている場合、1〜2ヶ月かかることもあります。令和6年3月から広域交付制度により最寄りの役所でも取得可能になりましたが、それでも時間はかかります。この作業が終わらないと、遺産分割も相続税申告も銀行口座の解約も全て止まります(戸籍法 第10条)。

戸籍の収集は相続手続き全体のボトルネックです。49日の法要が終わったら真っ先に着手してください。令和6年3月からの広域交付制度で最寄りの役所でも取得可能になりましたが、コンピュータ化前の古い戸籍は本籍地への郵送請求が必要な場合もあります。
遺族年金の請求
届出先: 年金事務所。遺族基礎年金は子のある配偶者または子が対象です。遺族厚生年金は故人が厚生年金加入者だった場合に支給されます。5年で時効になるため早めに請求してください(国民年金法 第37条、厚生年金保険法 第58条)。
生命保険金の請求
受取人が指定されている保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象外です。つまり他の相続人と話し合わなくても請求できます。請求から通常5〜10営業日で振り込まれます。契約が不明な場合は生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で調査可能です(保険法 第95条、時効3年)。
公共料金の名義変更・解約 / クレジットカードの解約
故人の口座が凍結されると口座振替が止まるため、早めに名義変更するか解約してください。クレジットカードは年会費の引き落としを止めるためにも早めの連絡をおすすめします。
3ヶ月以内にやること
相続放棄の申述(必要な場合) 法定手続き・3ヶ月以内
届出先: 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。3ヶ月を過ぎると単純承認とみなされ、借金も全て引き継ぐことになります。一度受理されると撤回できません。負債が資産を上回る場合や、負債の全容が見えない場合は早急に検討してください(民法 第915条・第938条)。
4ヶ月以内にやること
準確定申告 法定手続き・4ヶ月以内
届出先: 故人の住所地を管轄する税務署。故人がその年に所得を得ていた場合(自営業者、年金受給者など)に、相続人が代わりに確定申告を行います。還付金が出る場合もあるので、「面倒だから」と見送ると損することもあります(所得税法 第124条・第125条)。

準確定申告は相続人が代わりに行う確定申告です。故人に事業所得や不動産所得があった場合は計算が複雑になります。税理士に依頼すると費用は5〜15万円程度ですが、還付金が出るケースもあり、結果的にプラスになることもあります。
10ヶ月以内にやること
遺産分割協議
遺言書がない場合に相続人全員で遺産の分け方を話し合います。全員の合意が必要で、1人でも欠けると無効です。相続税の申告期限(10ヶ月)までに完了させるのが理想です。まとまらない場合は家庭裁判所の調停に進むことになります(民法 第907条)。
相続税の申告・納付 法定手続き・10ヶ月以内
届出先: 故人の住所地を管轄する税務署。基礎控除額(3,000万円 + 600万円 x 法定相続人の数)を超える場合に申告が必要です。ここで見落としがちなのは、配偶者控除や小規模宅地等の特例は「申告しないと適用されない」ということです。控除で税額がゼロになる場合でも、申告自体は必須です(相続税法 第27条)。

「配偶者控除で税額ゼロだから申告不要」はよくある間違いです。配偶者控除も小規模宅地特例も、申告書を提出して初めて適用されます。申告しなければ控除なしの税額で課税されます。
相続税の基礎控除と主な特例の詳細▼
基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 x 法定相続人の数。例えば配偶者と子2人なら 3,000万 + 600万 x 3 = 4,800万円まで非課税です。
配偶者の税額軽減: 法定相続分または1億6千万円のいずれか多い方まで非課税です(相続税法 第19条の2)。ただし二次相続(配偶者が亡くなった時)の税負担も含めてトータルで考えないと、結果的に税金が増えることもあります。
小規模宅地等の特例: 自宅の土地の評価額を最大80%減額できます。例えば1億円の土地が2,000万円の評価になります。適用には同居等の要件と申告が必須です(租税特別措置法 第69条の4)。

相続税の申告は特例の適用判断が複雑なため、税理士への相談をおすすめします。特に不動産がある場合は評価方法で税額が大きく変わります。税理士を探す
遺産分割後にやること
預貯金の解約・名義変更
金融機関に死亡を連絡すると口座が凍結されます。凍結後は遺産分割完了まで原則引き出しできません。ただし2019年から仮払い制度があり、1金融機関150万円まで引き出せます。葬儀費用や当面の生活費に充てることを想定した制度です(民法 第896条、第909条の2)。
有価証券の名義変更
届出先: 各証券会社。相続人名義の証券口座が必要なため、口座を持っていない場合は先に開設手続きを行ってください。各証券会社で書式が異なるため事前に確認してください(民法 第896条)。
不動産の相続登記 法定手続き・3年以内(義務)
届出先: 不動産の所在地を管轄する法務局。2024年4月1日から義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科されます。それ以前の相続も対象です(2027年3月末までに登記が必要)。すぐに遺産分割がまとまらない場合は「相続人申告登記」で期限を延ばせます。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です(不動産登記法 第76条の2)。
自動車の名義変更(移転登録)
届出先: 新所有者の住所地を管轄する運輸支局。名義変更には新所有者の車庫証明が必要です。所有権移転の事由発生日から15日以内が法定期限です(道路運送車両法 第13条)。
遺産分割トラブルの実態
「うちは財産が少ないから揉めない」と考える人は多いですが、統計はその認識を覆します。
遺産分割事件の遺産額別割合(令和6年 司法統計)
出典: 裁判所 令和6年司法統計年報(家事編)
全体の約76%が遺産額5,000万円以下です。自宅不動産の価値を含めるとこの範囲に入る家庭は非常に多いです。「分けにくい不動産」が遺産の大部分を占めるケースほど揉めやすい傾向があります。
パターン別の注意点
遺言書がある場合
- 公正証書遺言 ― 検認不要です。すぐに遺言の内容に基づいて手続きを進められます。
- 自筆証書遺言 ― 家庭裁判所での「検認」が必要です。検認なしで遺言を執行すると5万円以下の過料が科されます(民法 第1004条)。ただし法務局の保管制度を利用した場合は検認不要です。申立てから検認まで1〜2ヶ月かかります。
- 遺言書が見つからない場合 ― 公証役場の「遺言検索システム」や法務局への照会で確認できます。
借金・負債がある場合
最も重要なのは相続放棄の期限(3ヶ月)を意識することです。
- 相続放棄 ― プラスもマイナスも一切引き継ぎません。3ヶ月以内に家庭裁判所に申述します。一度受理されると撤回できません。
- 限定承認 ― プラスの財産の範囲でのみ負債を引き継ぎます。相続人全員で申述が必要で手続きが複雑ですが、財産と借金のどちらが多いかわからない場合に有効です。
- 負債の調査 ― 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に照会して故人の借入状況を確認できます。
相続放棄・限定承認の法的根拠▼
民法第915条: 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について承認又は放棄をしなければならない。
民法第938条: 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
民法第922条〜第937条: 限定承認は相続人全員で共同して行い、相続財産の限度でのみ被相続人の債務を弁済する責任を負う。
相続税がかかる場合
- 配偶者の税額軽減 ― 法定相続分または1億6千万円のいずれか多い方まで非課税です。ただし申告が必要です(相続税法 第19条の2)。
- 小規模宅地等の特例 ― 自宅の土地の評価額を最大80%減額できます。適用には申告が必須です(租税特別措置法 第69条の4)。
- 税理士への依頼 ― 費用は遺産総額の0.5〜1%程度が目安です。適正な節税で報酬以上の効果が出ることも多いです。
相続手続き一覧表
| 手続き名 | 届出先 | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 死亡届の提出 | 市区町村役場 | 7日以内(法定) |
| 年金受給停止届 | 年金事務所・市区町村役場 | 14日以内(法定) |
| 世帯主変更届 | 市区町村役場 | 14日以内(法定) |
| 健康保険の資格喪失届 | 市区町村役場・勤務先 | 14日以内(法定) |
| 相続人の確定(戸籍収集) | 市区町村役場 | 早めに(1〜2ヶ月) |
| 遺族年金の請求 | 年金事務所 | 早めに |
| 生命保険金の請求 | 各保険会社 | 3年で時効 |
| 公共料金の名義変更・解約 | 各事業者 | 早めに |
| クレジットカードの解約 | 各カード会社 | 早めに |
| 相続放棄の申述 | 家庭裁判所 | 3ヶ月以内(法定) |
| 準確定申告 | 税務署 | 4ヶ月以内(法定) |
| 遺産分割協議 | 相続人全員で協議 | 10ヶ月以内が目安 |
| 相続税の申告・納付 | 税務署 | 10ヶ月以内(法定) |
| 預貯金の解約・名義変更 | 各金融機関 | 遺産分割後 |
| 有価証券の名義変更 | 各証券会社 | 遺産分割後 |
| 不動産の相続登記 | 法務局 | 3年以内(義務) |
| 自動車の名義変更 | 運輸支局 | 15日以内(法定) |
まとめ
相続手続きは期限が厳格で、数も多いです。しかし、時系列に沿って一つずつ進めれば着実に完了できます。まずは目前の期限から対処し、並行して戸籍の収集を進めるのが現実的な進め方です。
1. 相続放棄は3ヶ月以内。期限を過ぎると借金も含めて全て引き継ぎます。負債の調査は早めに行いましょう。
2. 相続税の申告は10ヶ月以内。配偶者控除や小規模宅地特例は「申告しないと使えない」。税額ゼロでも申告必須です。
3. 相続登記は3年以内で義務。2024年4月から義務化されました。それ以前の相続も2027年3月末までに登記が必要です。
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