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住宅ローンの借り換えで多いのは、「金利は下がったのに、思ったほど得しなかった」「途中で進められなくなった」という失敗です。諸費用の見積もりが甘かった、団信の告知で引っかかった、旧ローンの完済予約が間に合わず実行日がずれた、といった具合です。
借り換えの後にも落とし穴があります。諸費用を上乗せして借りたのに住宅ローン控除の計算を直さないまま年末調整に出してしまう、古いローンの火災保険に付いていた質権に気づかず放置する、といったケースです。
この記事では、住宅ローン借り換えの前後に起きやすい5つのトラブルと、その防ぎ方を解説します。金利水準や審査基準は銀行によって異なるため、最終的な判断は各金融機関と、税に関しては税務署・税理士に確認してください。
諸費用を入れたら、ほとんど得にならなかった
相談
金利が0.5%下がる銀行を見つけて借り換えましたが、手数料などを引くと数万円しか変わりませんでした。
回答
借り換えの損益は「金利差」ではなく「総返済額の削減額から諸費用を引いた残り」で決まります。諸費用は残高2,000〜3,000万円クラスでおおむね30万〜100万円程度が相場で、内訳は事務手数料(定率型=借入額×2.2%が主流/定額型=3.3万〜5.5万円程度)、保証料、印紙税(書面契約で借入1,000万円超5,000万円以下なら2万円。電子契約なら不要)、登録免許税(抵当権設定=債権額の0.4%、抹消=不動産1個につき1,000円)、司法書士報酬(借り換え一式で5〜10万円程度が目安)、旧ローンの全額繰上返済手数料(無料〜33,000円程度)です。とくに定率型の事務手数料は借入額に比例するため、残高が大きいほど重くなります。
昔から言われる「残高1,000万円以上・残り期間10年以上・金利差1%以上」は慣行的な目安で、条件次第では金利差0.3%程度でも効果が出る一方、手数料の型を見誤ると効果が消えます。試算は必ず「諸費用込みの総返済額」で、定率型と定額型の両方の銀行を比べてください。旧ローンで保証料を一括前払いしていた場合は、戻り保証料(未経過分の返金)も損益に入れます。
団信の告知で引っかかり、借り換えができなかった
相談
本審査まで進んだのに、持病を告知したら団信に加入できず、借り換え自体が白紙になりました。
回答
民間の住宅ローンは団信への加入が融資条件のため、団信に入れないと借り換えは成立しません。借り換えは新しいローン契約なので、今のローンの団信は引き継げず、健康状態の告知からやり直しになります。ここで注意してほしいのは、通るために事実と違う告知をしないことです。告知義務違反は、いざというときに保険金が支払われず、契約を解除されるリスクがあります。
選択肢は2つあります。ひとつは、引受基準を緩和した「ワイド団信」を扱う銀行に申し込むこと(金利+0.2〜0.3%程度が一般的。加入できるかは引受保険会社の判断です)。もうひとつは、団信への加入が任意のフラット35への借換融資(借入期間15年以上などの要件あり)です。健康に不安がある方は、仮審査の段階で「ワイド団信の取扱いがあるか」を条件に銀行を絞り込んでおくと、本審査後に白紙になる事態を避けられます。逆に健康な方にとっては、がん保障などの上乗せ団信を無料で付ける銀行もあり、借り換えは保障を見直す機会になります。
完済予約が間に合わず、融資実行日がずれた
相談
新しい銀行との契約日が決まってから今の銀行に連絡したら、「その日には完済できない」と言われました。
回答
全額繰上返済(完済)の事前申出には銀行ごとに期限があり、完済日の10営業日前まで、4週間前まで、といった定めがあります。この予約が遅れると、新ローンの融資実行日に旧ローンを完済できず、日程全体を組み直すことになります。対処は、新旧の銀行に事情を説明して、旧銀行が完済できる最短の日に合わせて実行日を再設定することです。
今後のためには、本審査の承認が出た時点で(契約より前に)旧銀行へ完済予定日を伝えて予約し、あわせて①全額繰上返済手数料(同じ銀行でもインターネット手続きなら16,500円・窓口なら33,000円のように差がある例があります)②完済当日に抵当権抹消書類を受け取るための必要日数(2〜3週間前までの連絡を求める銀行があります)を確認しておいてください。
諸費用を上乗せして借りたのに、住宅ローン控除をそのまま申告していた
相談
残高2,000万円のところ、諸費用込みで2,100万円借りました。年末調整で新しい銀行の残高証明書をそのまま出してよいですか?
回答
そのままではありません。借り換え後も住宅ローン控除は続けられますが(①新しいローンが当初ローンの返済のためのものであることが明らか ②新しいローン自体が償還期間10年以上などの要件を満たす、の2要件)、借入額が借り換え直前の残高を上回った場合、控除の対象は「新ローンの年末残高×直前の残高÷借入額」で按分した金額になります。ご質問の例なら、年末残高に2,000÷2,100を掛けた額が対象です。年末調整で申告する場合は、この按分後の金額を自分で計算して記載します。
また、控除を受けられる期間は入居した年から数えた当初の期間のままで、借り換えで延長されることはありません。すでに誤った金額で申告してしまった場合や、按分の計算に迷う場合は、税務署に相談してください。個別の適用可否・計算は税務署・税理士の判断になります。
古いローンの火災保険に質権が付いていて、手続きが止まった
相談
完済したのに、火災保険の証券が旧銀行に預けられていると言われました。
回答
2000年代以前の住宅ローンや公庫融資では、火災保険金に金融機関の「質権」が設定され、保険証券を銀行が預かっているケースがあります。完済すれば質権を外せますが、自動では外れません。旧銀行に質権解除の手続きを依頼し、保険会社と書類をやり取りして(1〜2週間程度)、質権解除の証書と保険証券を返してもらいます。新しい銀行から改めて質権設定を求められることは、現在ではほとんどありません。
火災保険そのものは原則そのまま継続でき、借り換えで入り直す必要はありません。この機会に①保険期間がローンの残期間より短くなっていないか②保険金額が建物に見合っているか、の2点は確認しておくと安心です。
申し込む前にできる予防策
住宅ローン借り換えのトラブルを防ぐチェックリスト
- 損益は「諸費用込みの総返済額」で比べます。諸費用は30万〜100万円程度が相場で、事務手数料の型(定率2.2%か定額か)で大きく変わります。
- 団信は入り直しで、告知内容によっては借り換えができません。健康に不安があればワイド団信や団信任意のフラット35を最初から候補に入れます。
- 本審査が通ったらすぐ旧銀行へ完済予約(10営業日〜1か月前)。借り換え後の住宅ローン控除は、諸費用を上乗せした分だけ按分計算になります。
まとめ
住宅ローン借り換えの手続きのトラブルは、制度の条件と手続きの順番を知らなかったことが原因のものがほとんどです。次の3点を先に押さえておけば、多くは防げます。
1. 損益は「諸費用込みの総返済額」で比べます。諸費用は30万〜100万円程度が相場で、事務手数料の型(定率2.2%か定額か)で大きく変わります。
2. 団信は入り直しで、告知内容によっては借り換えができません。健康に不安があればワイド団信や団信任意のフラット35を最初から候補に入れます。
3. 本審査が通ったらすぐ旧銀行へ完済予約(10営業日〜1か月前)。借り換え後の住宅ローン控除は、諸費用を上乗せした分だけ按分計算になります。


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