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遺言書作成の完全ガイド|自筆証書・公正証書の選び方から手続きの流れまで解説

遺言書作成

「遺言書を作ろうと思ったが、自筆証書と公正証書のどちらを選べばいいのかわからない」「せっかく書いた遺言書が無効になったらどうしよう」――遺言書の作成を検討し始めた人が最初にぶつかる壁がこれです。

日本公証人連合会の統計によると、公正証書遺言の作成件数は2023年に約11.8万件で、過去10年間で約1.4倍に増加しています。また、法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月開始)の利用件数も毎年増加しており、2023年度は約2.4万件にのぼります。遺言書作成のハードルは着実に下がっています。

遺言書は一度作成すれば家族の将来を守れる重要な書類ですが、方式を間違えると法的に無効になります。日付の書き方ひとつで無効になった判例もあります。逆に言えば、正しい手順を踏めば自分で作成できる手続きでもあります。

この記事では、遺言書の種類の選び方から、準備すべき書類、作成の手順、作成後の保管方法までを時系列で解説します。

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遺言書作成の手続きフロー図 — 準備から定期見直しまでの流れ
遺言書作成の全体フロー(時系列順)

まず決めること:自筆証書遺言と公正証書遺言の選び方

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。どちらを選ぶかで手続きの流れ・費用・リスクが大きく変わります。

比較項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
費用 無料(法務局保管は3,900円) 公証人手数料(数万円〜)+証人費用
作成方法 自宅で自筆 公証役場で公証人が作成
無効リスク 方式不備で無効になるリスクあり 公証人が確認するためリスク低い
検認 必要(法務局保管なら不要) 不要
証人 不要 2名必要
保管 自宅または法務局 原本は公証役場で保管

費用を抑えたいなら自筆証書遺言(法務局保管制度を併用するのが安心)、確実性を重視するなら公正証書遺言が適しています。事業承継を含む複雑な内容の場合は、公正証書遺言が特に推奨されます。

相談者
相談者

自筆証書遺言を自分で書くつもりですが、自信がありません。あとから公正証書に作り直すことはできますか。

ナビ
ナビ

はい、遺言書は何度でも書き直すことができ、最も新しい日付のものが有効になります(民法 第1023条)。まず自筆証書遺言で大枠を作り、内容が固まったら公正証書に作り直す方も少なくありません。両方の形式が存在する場合、内容が矛盾する部分は新しい方が優先されます。

準備段階でやること

遺言書の種類に関わらず、まず以下の準備が必要になります。ここを省略すると、遺言書の内容が不正確になったり、相続開始後にトラブルの原因になったりします。

財産の棚卸し(2ヶ月前〜)

財産の棚卸し(不動産・預貯金・有価証券・保険・負債)

全ての財産を漏れなくリストアップします。預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を記録し、不動産は登記事項証明書で正確な所在・地番を確認します。負債(住宅ローン・借入金等)も必ず含めてください。生命保険は受取人が指定されているため遺産分割の対象外ですが、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象になります。

不動産の登記情報の確認(不動産がある場合)

法務局で登記事項証明書を取得します(窓口600円/通)。遺言書に不動産を記載する場合は、住所(住居表示)ではなく登記上の「所在」「地番」「家屋番号」を正確に書く必要があります。この2つは異なるため要注意です(不動産登記法 第119条)。

相続人の確定

相続人の確定(法定相続人の調査) 法定手続き

出生から現在までの連続した戸籍謄本を取得し、法定相続人を正確に把握します。認知した子や養子も法定相続人になります。戸籍謄本450円/通、除籍謄本・改製原戸籍750円/通です。本籍地が異なる市区町村にある場合は、それぞれの役場に請求が必要です(マイナンバーカードがあれば広域交付も可能)(民法 第886条〜第895条)。

遺留分と相続税の確認

遺留分の確認

遺留分とは、法定相続人に保障された最低限の取り分です。直系尊属のみが相続人の場合は遺産の1/3、それ以外は1/2です。兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分を侵害する遺言も有効ですが、相続開始後に遺留分侵害額請求をされるリスクがあります。特定の人に多く残したい場合でも、遺留分を考慮した配分にすることで紛争を防げます(民法 第1042条〜第1049条)。

相談者
相談者

長男に自宅を、次男に預貯金を残したいのですが、金額が偏ります。遺留分を侵害しない方法はありますか。

ナビ
ナビ

よくあるパターンです。主な対策は3つあります。1つ目は生命保険の活用です。長男を受取人にした保険金で自宅取得分の差額を調整する方法です。保険金は遺産分割の対象外なので柔軟に設計できます。2つ目は代償分割の指示です。遺言書で「自宅を取得する長男は次男に○○万円を支払う」と指定する方法です。3つ目は付言事項で配分の理由を説明することです。法的効力はありませんが、遺留分侵害額請求を思いとどまらせる効果が期待できます。

相続税の概算計算

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。この金額以下なら相続税はかかりません。不動産は路線価(公示地価の約80%)で評価します。生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(相続税法 第15条・第16条)。

ナビ
ナビ

財産の棚卸し・相続人の確定・遺留分の確認は、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも共通の準備です。ここを丁寧にやっておくと、遺言書の内容が正確になり、相続開始後のトラブルを大幅に減らせます。

自筆証書遺言の作成手順

自筆証書遺言の作成 方式要件あり

民法968条の方式要件を厳守してください。1つでも欠けると遺言が無効になります。

自筆証書遺言の4つの方式要件(民法 第968条)は以下の通りです。

1. 全文を自筆で書く

パソコン・ワープロは不可です。ただし2019年の改正で財産目録に限りパソコン作成可(各頁に署名押印が必要)になりました。

2. 日付を自筆で正確に書く

「令和○年○月○日」と特定できる記載が必要です。「○月吉日」は日付の特定ができず無効になります。

3. 氏名を自筆で書く

戸籍上の氏名が確実です。通称やペンネームでも有効とされた判例はありますが推奨しません。

4. 押印する

実印が望ましいですが、認印でも法律上は有効です。ボールペンまたは万年筆など消えない筆記具を使用してください。

修正方法にも厳格な要件があります

修正する場合は、修正箇所を指示し変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印が必要です。面倒なら書き直した方が確実です。

相談者
相談者

遺言書に「令和6年3月吉日」と書いてしまいました。これは有効ですか。

ナビ
ナビ

「吉日」は無効になります。最高裁昭和54年5月31日判決で、「日付の記載は暦上の特定の日を表示するもの」と示されており、「吉日」では日付が特定できないため方式違背として無効です。「令和6年3月15日」のように年月日を明確に書いてください。新たに書き直せば問題ありません。

無効になりやすい記載例

「○月吉日」(日付が特定できない) / パソコンで本文を印刷(自筆でない) / 押印なし / 署名が通称のみで本人特定が困難 / 「財産は妻に任せる」(具体的な処分方法が不明確) / 共同遺言(夫婦連名で1通、民法975条で禁止)。

有効とされやすい記載例

「○○銀行○○支店の普通預金(口座番号○○)は妻○○に相続させる」のように、財産の特定と処分方法が明確に記載されているもの。不動産は登記簿の「所在」「地番」で特定してください。

法務局での遺言書保管制度

法務局での自筆証書遺言書保管制度の利用

2020年7月施行の保管制度を利用すると、紛失・改ざんの防止、検認手続きの省略、死亡時通知の設定が可能になります。手数料は3,900円です。遺言者本人が法務局に出頭する必要があります(代理人不可)。遺言書はA4片面・余白規定あり(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)です。事前予約が必須です(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言の作成(公証役場) 法定手続き

民法969条に定められた方式で、公証人が作成します。原本は公証役場で保管されるため紛失・改ざんの心配がありません。公証人との打合せから完成まで2〜4週間です。

証人2名の手配

公正証書遺言には証人2名以上の立会いが必要です。以下の人は証人になれません(民法 第974条)。

  • 未成年者
  • 推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人

知人に依頼するか、公証役場や弁護士事務所で紹介を受けることもできます(1名あたり5,000〜15,000円程度)。証人は遺言の内容を知ることになるため、守秘義務のある専門家に依頼するのも一つの方法です。

公証人手数料の目安

財産の価額 手数料
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円

財産総額が1億円以下の場合は遺言加算として11,000円が加算されます。手数料は相続人・受遺者ごとに算出し合計します(公証人手数料令 第9条別表)。

相談者
相談者

証人を2人用意しないといけないのですが、周りに頼める人がいません。費用はどれくらいかかりますか。

ナビ
ナビ

公証役場に依頼すれば証人を紹介してもらえます。費用は1名あたり5,000円〜15,000円が相場です。弁護士・司法書士・行政書士に依頼する場合も同程度です。証人は遺言の内容を知ることになるので、守秘義務のある専門家に頼むのが安心です。友人・知人に依頼する場合は無料ですが、推定相続人やその配偶者・直系血族は証人になれない点に注意してください。

作成後にやるべきこと

遺言執行者の指定

遺言執行者を遺言書の中で指定しておくと、相続人全員の協力がなくても不動産の名義変更や預金の解約手続きを進められます。利害関係のない弁護士・司法書士等を指定するのが理想です(民法 第1006条)。

生命保険の受取人確認・変更

遺言で受取人を変更することも可能ですが(保険法43条)、保険会社への通知が必要です。現在の受取人が遺言の内容と整合しているか確認しておきましょう。

エンディングノートの作成

法的効力はありませんが、遺言書に書ききれない情報(デジタル資産のパスワード、葬儀の希望、医療の意向、家族へのメッセージ等)を残すのに最適です。遺言書とセットで作成することをおすすめします。

遺言書の定期見直しが必要な場面

遺言書は作成後も以下のタイミングで見直しが必要になります。不動産の売却・購入 / 相続人の死亡・離婚・結婚 / 孫の誕生 / 財産の大幅な増減 / 事業承継の方針変更 / 法改正(配偶者居住権の創設等)。古い遺言書のまま放置すると、存在しない財産が記載されていたり、想定外の配分になったりします。5年に1度は内容を確認し、必要に応じて書き直すことをおすすめします。

遺留分の計算例と侵害額請求の時効

計算例: 遺産総額5,000万円、相続人が配偶者と子2人の場合。

遺留分の割合 = 遺産の1/2 = 2,500万円。配偶者の遺留分 = 2,500万円 x 1/2 = 1,250万円。子1人の遺留分 = 2,500万円 x 1/4 = 625万円。

遺言で「全財産を長男に」と記載しても有効ですが、配偶者は1,250万円、次男は625万円の遺留分侵害額請求権を持ちます。

時効: 遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年で消滅します(民法 第1048条)。

法務局の遺言書保管制度の利用手順

1. 遺言書を作成する: A4片面、余白規定(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)を守ります。

2. 予約する: 法務局の専用サイトまたは電話で事前予約します(予約なしでは受付不可)。

3. 法務局に出頭する: 遺言者本人が出頭します。本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)、住民票の写し、遺言書、申請書、手数料3,900円を持参してください。代理人は不可です。

4. 保管証を受け取る: 保管番号が記載された保管証を受け取ります。相続人に保管番号を伝えておくと、相続開始後の検索がスムーズになります。

5. 死亡時通知を設定する: 遺言者の死亡後、指定した人(推定相続人等1名)に遺言書が保管されている旨を通知する制度です。設定は無料です。

遺言書作成の手続き一覧表

手続き名 届出先・場所 費用目安
財産の棚卸し 自宅(金融機関・法務局で確認) 登記事項証明書600円/通 等
相続人の確定 市区町村役場 戸籍謄本450円/通
遺留分の確認 自宅(必要に応じ弁護士相談) 自分で計算なら無料
相続税の概算計算 自宅(必要に応じ税理士相談) 自分で計算なら無料
自筆証書遺言の作成 自宅 無料
法務局での遺言書保管 法務局(遺言書保管所) 3,900円
証人2名の手配 公証役場・弁護士事務所等 0〜15,000円/名
公正証書遺言の作成 公証役場 数万円〜(財産額による)
遺言執行者の指定 遺言書内で指定 追加費用なし
生命保険の受取人確認 保険会社 無料
エンディングノートの作成 自宅 0〜2,000円
遺言書の定期見直し 自宅(必要に応じ専門家相談) 5年ごと推奨

まとめ

遺言書の作成は、正しい手順を踏めば自分で進められます。最後に3つのポイントを押さえておきましょう。

1. 準備が8割です。財産の棚卸し・相続人の確定・遺留分の確認を丁寧にやることが、有効な遺言書の土台になります。

2. 自筆証書遺言は法務局保管制度と併用しましょう。3,900円で紛失防止・検認不要・死亡時通知が手に入ります。

3. 作成後も定期的に見直しましょう。財産の増減や家族構成の変化があったら遺言書を更新してください。5年ごとの見直しが推奨されます。

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